うま味のふるさと探訪

ヤマシン醸造 木桶 ヤマシン醸造 木桶

料亭御用達、碧南生まれの調味料。
白しょう油の可能性を広げたい

ヤマシン醸造株式会社碧南

ヤマシン醸造 外観たまり醤油と並んで東海地域で愛されてきた碧南市生まれの調味料、白しょう油について、ヤマシン醸造の代表取締役社長 岡島晋一さんと、製造部 高橋龍宏さんにお話を伺いました。

碧南で味醂や
白しょう油づくりが盛んな理由

白醤油、白だしヤマシン醸造株式会社の歴史は200年以上。その創業は享和2年(1802年)、江戸時代まで遡ります。

ヤマシン醸造創業の頃、知多半島や三河地区は、知多湾(現在の衣浦港)、三河湾といった穏やかな内海に面した良港に恵まれ、江戸のまちを支える物流拠点として、廻船業とその積荷となる醸造品などの生産で栄えていました。
現在の碧南市の辺りには、大浜港(大濱湊)、鷲塚港(鷲塚湊)という2つの港があり、醤油やみりん、日本酒などの醸造品や綿などを生産していました。
当時の大浜周辺は知多湾(衣浦湾)に突き出した村で、海沿いに大きな砂浜が広がったことから“大浜”と呼ばれるようになり、古くから海上交通の要衝として栄えていました。

良質な水や気候風土が醸造業に適していたことに加えて、人口が増え続ける江戸のまちへの食料品供給ニーズの高まりと、愛知県の中央部を流れる矢作川(やはぎがわ)を通じて豊田市や岡崎市などの流域から醸造用の米や大豆、小麦などの原材料の調達が簡単だったことがこの地域で醸造業が発展した理由といわれています。 

正確なところはわからないのですが、うちが廻船問屋をやっていたという記録はありません。
地主として米や麦などの原材料が手に入りやすかったというところから、醸造業に取り組むことになったのだと思います。

ヤマシン醸造は200年と少しですが、碧南でいう九重味淋さんや半田市の中埜さんのところ(ミツカン)のような創業から300年クラスのところは、廻船問屋、今でいう運輸業から始まっているところが多いですよね。
船を持つには資本がいるので、逆にいうとそれだけの資本があったということです。その財を生かして、その時々にあわせて、塩がいいとなれば塩田をやり、塩ができればそれを加工して醤油を作ったりされています。
そうした廻船問屋のもつ流通網がこの地域にはありましたので、この周辺で作られた醤油や味噌などは、碧南の辺りだけで集めたり、いったん武豊の港に集められたりしていました。そこから三重県の鳥羽の港に行き、東の遠州灘、下田へと向かったそうです。
鳥羽に停泊しながら天候などを見て、遠州灘が無事に抜けられるように風を待ったりしてから、江戸の方面に向かったと。下田で積み荷の検査を受けたのち、最終的に江戸を目指すルートだったみたいです。

ヤマシン醸造の歴史

味醂酒醸造所 - 鳥居新六

〜 明治の頃の風景 〜 川崎源太郎 著『尾陽商工便覧』より

ヤマシン醸造は、私で岡島家の5代目となります。
その前の鳥居家の時代で3代くらいだと思うのですが、古い記録が一切残っていないんです。というのは、実は、昭和11年に全焼してしまって、記録や系譜が全て焼けてしまいました。その際に、問屋業をやっていた岡島の家が鳥居の家から醸造業を引き継がせてもらったと聞いています。

ヤマシン 製造 外観

今、木桶が70本くらいありまして、木桶の数は、白しょう油ではかなり多い方だと思います。
仕込みに使う木桶などは、全焼してから酒屋さんから譲っていただいて集めたり、新しく作ったりしています。白しょう油は一度醤油で使った木桶は使えないので、譲ってもらう場合も日本酒のものしか使えないんですね。その後も、伊勢湾台風の時にも被害が出て、その時にも作り直したりしています。
メンテナンスは近くに職人さんがいなくなってしまっているので、今後いろいろと検討しないといけないのですが、補修しながら大切に使っています。

ヤマシン醸造 木桶ヤマシン 工場

ヤマシンの「白しょう油」

白しょう油はこの碧南市が発祥でして、発祥の地として近くの明石公園には記念碑が建っています。作り始めた当初、白しょう油のことを当社では“しらつゆ”と呼んでいたのですが、それが広まらずに、一般的に「白しょう油」と呼ばれるようになりました。

白しょう油誕生のいわれとしては、麦で作った麹、金山寺味噌を仕込んでいた時に、金山寺味噌の上澄み、淡い色をした黄金色の液体を舐めてみたら、醤油に似ておいしかった。
そうして新たな調味料として使われたのが始まりだといわれています。

ヤマシン醸造の白しょう油の材料は、小麦が9割以上です。今は、農水省の方で、大豆を少しでも入れないと醤油と認められないと決められているので、100%小麦だと「醤油」と謳えなくなってしまいます。また大豆には旨味がすごくありますので、少し入れると旨味が増します。
ただ、大豆が多いとその分、色が黄色くなってしまう。味を取るか色味を取るか、甘みを取るか旨味を取るかといったことのバランス、せめぎ合いですね。ヤマシン 生産工程ヤマシン 生産工程

ヤマシン醸造の商品について

ヤマシン醸造 商品
ヤマシン醸造は、総合的な醸造業として始まりました。豆味噌、一緒にたまり醤油も作って、小麦があれば味醂も作ってと、それまでいろいろな醸造品を作っていたのを、明治の頃くらいに、白しょう油専業に切り替えました。

販売では、一般向けと業務用の比率でいうと業務用の方が多くて、大体一般向けが3割くらいですかね。一般の方に向けた販売は、この辺りの地域が消費の中心となっていまして、東海圏だと大体のスーパーなどで扱っていただいています。

2018年には「ヤマシン白しょう油」が農林水産大臣賞をいただいたので、今はそのラベルのシールが貼ってあります。2019年には「ヤマシンさしみたまり」も受賞しまして、2年連続での受賞となりました。

極 白醤油「極(きわみ)白醤油」は、従来の白しょう油と比べて醤油に寄せて、色を押さえたまま、従来より2割ほど旨味を増したものです。
醤油と比べて使いづらいと言われることのあった部分を補いながら、通常の白しょう油と比べていただいて、目的やお好みで選んでいただければということで開発をしました。

旨味を増しながら、糖分や塩分を抑えることで旨味をより感じやすくして、醤油寄りの味わいにしています。旨味も大豆を使うではなく、小麦そのものからの旨味、グルテンの旨味を引き出しています。

その他の商品としては、白しょう油をベースにした白だしや、ドレッシング類なども作っています。ヤマシン 生産工程

新しい取り組みとこれから

醤油、味噌の消費量を見ると、全体で毎年2%前後くらい下がっている状況なんですね。
国内の消費でいうと、右肩下がりと言うのが現状です。食の多様化ということだったり、食べる量自体も減っています。

今は、ご家庭内では、手間のかかる料理は休日にじっくりやろうかなということはあっても、日常的には、かけたり浸けたりするだけですぐ食べれられるもの、平日にさっと使えるものというのが重宝されるようになっています。

昔は白しょう油をもとにした「白だし」くらいしか昔はやっていなかったのですが、そうした洋風の食文化や、社会の変化に対応できるようにということで、白しょう油の認知度を向上しながら、使っていただく機会を増やすために、「オリーブ白しょう油」シリーズをはじめました。そういった取り組みは、ここ10年くらいですね。

オリーブ白しょう油

白しょう油をベースにした新しい調味料、新しい使い方へ広げていく可能性を追求しているところです。

この「オリーブ白しょう油」シリーズを開発して、オリーブなどの油と白しょう油、ペッパーやバジルといった香辛料やハーブ類みたいなものを混ぜて加工品ができるようになったことで、いろいろなところからPB(ブライベードブランド)品のご相談も増えるようになりました。

商品開発商品開発

わかりやすいところですと、例えばラーメンチェーン店のラー油やドレッシングをご依頼いただいたりですね。あとは東京で展開しているスーパーのPB品だったり、こちらはおかげさまで生産がなかなか追いつかないくらいの人気商品になっています。

最近では、発酵への注目も高まっていて、例えば味醂の場合は糖度も高くてそのままお酒がわりに飲むこともできますよ。とか、アイスクリームにかけて大人の味として提案したり、隠されていた魅力がみつかるようになっています。そういうところで新しい消費を見つけているところもあります。
白しょう油もそういうことがあるといいのですが、やはり基本は醤油なので、そういった新しい使い方というのがそれほど今のところは見つかっていません。生産
白しょう油と聞くと、やはり一般には「プロの料理人が使うものですよね」と言われる場合が多いのです。
しかし、これを海外にもっていくと、白しょう油はこういう風に使うものだという固定概念がないので、匂いを嗅いで“フレーバーが面白い”、味をみて、“じゃあ、お刺身につけてみるとどうかな”と、日本人では考えられないようなことも試して、面白いと言ってくれたりします。

特に北米ではラーメンブームということもあって、タレの中に白しょう油を使うレシピが一般的なものとして広まっていて、伸びています。そういう点でも、海外向けの展開は、今後の可能性として面白さはあると考えています。

ヤマシン醸造株式会社
〒447-0064愛知県碧南市西山町3-36
https://www.yamashin-shoyu.co.jp/

ヤマシン醸造 オンラインショップ
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